近い将来ノーベル賞が確実な《ゲノム編集》という技術

ゲノム編集

そもそもゲノム編集というのは何なのか?

ゲノム編集というのは、遺伝子を操作する技術のことをいいます。

私たちが遺伝子操作と聞いてまず浮かんでくるものが、遺伝子を組み替えて別の種を作り出す『遺伝子組み換え食品』などが挙げられると思います。

しかし、この遺伝子組み換えという技術は、狙った効果を得るために何百回・何千回という試行を繰り返して、ようやく成功するかしないかの、いわば運任せの要素が強い技術なんです。

この偶然の産物とも言える遺伝子操作を、さらに進化させた技術がゲノム編集という画期的な技術ということです。

ゲノム編集というのは、遺伝子をピンポイントで削除したり、別の遺伝子を組み込んだりすることができる、まさに神の領域に踏み込んだ技術となります。

今回は、この《ゲノム編集》という技術について触れていきたいと思います。

ゲノム編集は無限の可能性を秘めている

まずは、このゲノムというのは何なのか、ということから話しましょう。

ゲノム編集の『ゲノム』というのは『細胞の中の染色体やDNAを含んだ全ての遺伝子をまとめたもの』をいいます。つまり、私たちを作っている設計図といったところですね。

設計図を書き換えられるので、今現在では食品分野などで、遺伝子組み換えの技術に代わって研究が進められている分野です。

この設計図を狙った箇所で編集することができるので、当然のことながら食品の分野だけに留まらず、現代の医学では根治しないような病気であったり、怪我の後遺症などを完全に完治させる可能性が飛躍的にアップする技術として期待されています。

もちろん、治療の分野だけではなく、病原体そのものを駆逐するために、現在進行形で利用されている事実もあります。

ゲノム編集で食糧危機に救いの手

2012年、CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)という技術が開発されたことによって、ゲノム編集が可能となりました。

この技術によって、前述のように、それまで遺伝子組み換えという不確実な技術が中心だった品種改良が、スマートフォンでメールを編集するようなイメージで、遺伝子を編集することができるようになったんです。

日本ではすでに実験が成功している

例えば、日本の京都大学の研究チームが、ミオスタチンという遺伝子に目を付けて、魚のタイを品種改良することに成功しています。

ミオスタチンというのは、筋肉の成長をある程度まででストップをかける働きを持っている遺伝子です。このミオスタチンをゲノム編集によって取り除いたタイの肉が、通常の1.5倍に増加したという実験結果が出ています。

これを、これまでの遺伝子組み換え技術で行ったとすると、おそらく百年以上の歳月が必要だったと言われています。

アメリカではすでに実用化の段階

牛肉の消費量が最も多いアメリカでは、上記のタイに行った技術を、牛に施している実例が挙がっています。

つまり、牛のミオスタチンを取り除くことで、その牛の肉の量が、なんと2倍になったという結果が出ています。さらに、肉の量が増えるだけではなく、その成分なども同じに作ることが出来るので、これまでの遺伝子組み換え食品のように『危ない食品』ということもありません。

量だけではなく質も変えることが可能

上記の2例は、肉の量を増やすという結果を出していますが、ゲノム編集の技術を使うことで、さらに別の応用が利きます。

例えば『アレルギーが起きない卵・腐りにくいトマト・成長の早いサバ』といった感じで、どんどん研究が進められており、近い将来には、ほとんどの食品に応用されるのではないか、と言われています。

ゲノム編集が活躍するその他の分野

現在、私たち人類を死に至らしめている生物とは何か、をご存知でしょうか?

人間を死に至らしめている生物の2位は、何を隠そう私たち人間自身なのですが、これはだいたい予想がついたかと思います。ですが、その人間を上回る恐ろしい生物が存在しています。

その恐ろしい生物というのは、実は《蚊》なんです。

蚊というのは、マラリアを始めとして、デング熱・ジカ熱など、様々なウィルスを媒介していて、世界的に見ると年間で70万人以上の死者を出しています。この恐ろしい病原ウィルスを駆逐すべくゲノム編集が使われています。

つまり、ゲノム編集によって、マラリアに感染しない蚊を作り出し自然界に放って他の蚊と交配させます。さらに、マラリアに感染しない遺伝子を確実に次世代に遺伝させるための設計もゲノム編集で行い、99%の確率でマラリアに感染しない遺伝子を持った蚊が生まれます。

これによって、数年後にはマラリアに感染しない蚊だけが残るということです。ゲノム編集によって、感染源から駆逐することが可能となるわけですね。

ゲノム編集の究極的な応用分野

ゲノム編集は、受精卵の段階で編集することが可能となっています。

現段階で言えば、サルの受精卵で免疫機能を取り除いた実験がされていて、免疫不全のサルが生まれたという実験に成功しています。この結果から何が導き出されるのかというと、サルの受精卵で可能なゲノム編集は人間にも可能ということです。

つまり、親の希望する人間、デザイン・ベイビーが可能となります。

自由に遺伝子をデザインできる技術

この技術が実用可能となった場合、例えば、親の立場からすれば『頭脳明晰な子供に産んであげたい・オリンピック選手以上の身体能力を与えたい・モデルのような容姿にしたい』などという願望を持つと思います。

ゲノム編集というのは、このような遺伝子を持つ子供を作ることが可能となるんです。

もっと究極を言えば、これらの才能を全て併せ持った人間、つまり《IQ200以上・強靭な身体・容姿端麗》というパーフェクト・ヒューマンを生み出せるということです。

世界が完全に二極化する未来

ここまでゲノム編集の素晴らしい技術を述べてきました。しかしその反面、非常に大きな問題が浮上しているんです。

その問題点というのは、このゲノム編集が実用化されたとすると、この素晴らしいテクノロジーは、確実に今世界を支配している《富裕層》が独占する可能性が非常に高いということです。

仮に、ゲノム編集が実用化されたとしても、まず間違いなく富裕層以外の一般民というのは利用することが出来ないでしょう。富裕層が、権力や財力を使って自分の子供をゲノム編集することになります。

完全に能力をデザインされたパーフェクト・ヒューマンに、一般のナチュラル・ヒューマンが勝てるはずもありません。

つまり、この技術が確立することによって、これまで以上の支配構造が出来上がってしまうという、恐ろしい世界が実現することになります。

こういった事態を危惧している声が多いこともあって、国によってはゲノム編集自体を禁止しているところもあるんです。映画やマンガの世界だけの話だったことが、今では現実になりうるところにまで来ているんですね。

あとがき

今回は、ゲノム編集のことについてお話しましたが、いかがだったでしょうか?

本来であれば、平和や差別をなくすために研究・開発されてきた技術が、一部の特権階級がさらなる力を持つために利用されてしまう恐れが出てしまいます。

これまでの科学技術は当然のこと、ゲノム編集にしても『食糧危機を救うための技術・病気を根絶させるための技術・人がより幸せになるための技術』として進められてきたものです。ですが、素晴らしい技術ほど最初の目的と違った方向へと進んでしまう可能性が高くなります。

ゲノム編集という素晴らしい技術、これを本当の意味での世界平和に利用してほしいと、心から願っています。

それでは、今回はこの辺で。